Admesy社分光器を用いた透過測定
TECHNICAL INFORMATION
技術情報
2021.11.05
色彩輝度測定機
Admesy社分光器を用いた透過測定
1. はじめに
ここでは透過率測定の手順についてご紹介します。光を透過する対象物に関して測定するための方法をいくつか紹介します。また後半には正確な測定結果を確保するための注意事項を数点明記しています。
これらの測定はAdmesyのIliadソフトウェアの機能を使用して行います。最新のIliadバージョンは、AdmesyのWebサイトから無料でダウンロードできます。https://www.admesy.com/downloads/
2. 透過測定
2.1 はじめに
透過率測定は一般に2つのステップで構成されます。測定対象物は使用せずに基準となる標準光源を測定して基準値としてのデータを収集することと測定対象物を用いて測定することです。これら2つの測定値どうしの偏差が特定の測定対象物のスペクトル透過特性として定義されます。この章では透過率測定の一般的な見地について説明します。
2.2 測定のセットアップ
透過率測定では、物体の透過率を測定するために測定機と基準標準光源が必要です。この基準光源は、例えばLEDまたはハロゲン光源を用います。様々な光源は測定対象物のスペクトル(波長)特性に一致させることができます。例: 波長が700 nmのハイパスフィルターの測定〈700 nmの場合、標準白色LED光源ではその領域のスペクトルパワーが乏しいため、その光源で測定を行わないでください〉。このアプリケーションには700nmのスペクトル領域での出力が高いハロゲン光源がより適しています。図1は測定対象物(例: 青フィルター)の透過率測定のセットアップ例です。セットアップには積分球を接続した分光器と基準標準光源が用いられています。積分球は拡散光を得るために使用します。対象物の分光透過率(λ)は、光源から放出される透過スペクトル束ϕλtと測定機で測定できる入射束ϕλiの比率で定義します。
透過性のある測定対象物は全て、光の一部は反射され、一部は吸収され、一部は透過されます。対象物の特性はこれら3つの変数どうしの偏差で定義します。エネルギー保存の法則により物体に向けられた光源から放出される光の総量は、特定の対象物の吸収(α)、透過(τ)、反射(ρ)の合計に等しいと言えます(式1)。 測定機では対象物の透過率のみを測定します。吸収と反射については、本資料でご紹介している内容では測定できません。 式1を用いて集めたデータの合計として初めて導き出されます。
2.3 サンプルの特性
透過性のある測定対象物からは、特定の透過特性が得られる場合があります。測定の結果は測定対象を直接透過する場合もあれば、反対側に拡散光が分布する場合もあります。もちろん、どちらでも可能ですが、積分球ベースのシステムまたはコサインコレクターベースのシステムのどちらを選択するのかは重要な検討事項です。実際のところ、どちらのシステムも分光器の中に拡散光を取り入れますが、表面サイズが異なります。図3と図4は、拡散素材と非拡散素材の違いを表しています。拡散性の高い透過性のある対象物の場合、積分球を使用することを推奨します。コサインコレクターを使用して拡散性の高い透過性のある素材を測定すると、光の出力レベルが足りない可能性があります。設定自体が信号に対するノイズ比率が適切ではない場合があり、測定結果に悪影響を及ぼします。
3. 透過率測定手順(積分球/LED)
分光器と広帯域の基準標準を使用すると、測定対象物の特性を最も詳細に測定できます。しかしながら、全ての波長が測定対象物を均等に透過するわけではありません。分光器を使用すると各波長の透過率を正確に測定できます。図5の手順ではLED光源(Steropes)と積分球を接続した分光計を使用したセットアップを表しています。ここで紹介している全ての透過測定は、異なる機器を使用しているだけで本質的には同じ手順に従っています。さらに積分球は最適な拡散光を最大限に実現してくれるため、ここで説明するコサインコレクタシステムよりも優れています。また、拡散光は生産ラインでの対象物と測定機のセットアップの不整合の影響などを除去してくれます。適切な測定結果を得るには、積分球と測定対象物、測定対象物と光源との距離をできるだけ小さくすることが必要です。
4 透過率測定手順(コサインコレクター/LED)
図6は同様に透過率測定のセットアップを表していますが、分光器と積分球の組み合わせはコサインコレクターを備えた分光器用に変わっています。手順は同じです。基準値を設定してその後に測定を行います。適切な測定結果を得るには、コサインコレクターと測定対象物および測定対象物と光源との距離をできるだけ小さくすることが必要です。
5. 透過率測定手順(積分球/ハロゲン)
分光器とハロゲン光源のような広帯域基準光源を使用すると、測定対象物の特性を最も詳細に測定することができます。尚、全ての波長が測定対象物を均等に透過するわけではありません。図7の手順はハロゲン光源と積分球が接続された分光器を使用したセットアップを表しています。セットアップは前述の積分球を使用したセットアップ内容と比べて、スペクトル特性のみ異なるだけです。
6. 透過率測定手順(コサインコレクター/ハロゲン)
図8は同様に透過率測定のセットアップを表していますが、分光器と積分球の組み合わせは、コサインコレクターを用いた分光器用に変わっています。手順は同じです。基準値を設定してその後に測定を行います。 セットアップはコサインコレクターを使用した前述のセットアップ内容と比べて、スペクトル特性のみ異なるだけです。
7. 透過率測定に関する一般的な注意事項
測定精度と再現性を確保するための注意事項を数点、簡単に説明します。
- 測定に使用する機器の配置を調節すること。
- 機器間の距離を調節すること。また、作業する周囲の照明が測定結果に影響することを避けるため、照明は最小限にします。
- 測定対象の角度を調整すること。(光線方向を90°とします)
- 複数の測定を行う場合は、定期的に基準光源を用いて基準値を確認してデータに反映させます。
- 測定対象物、測定機、光源のスペクトル特性を検証すること。(例えばスペクトル領域が合致するハロゲン光源および測定機を使用して近赤外を測定します)。
- 基準値の設定と測定を行う前に、基準光源を安定化させること。
- 作業する周囲の光を配力すること。(周囲の光が測定機に入らないようにします)
- 発光するような物があれば、それによる影響を考慮すること。
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分光放射計 Neo
※現在はHeraシリーズの取り扱いを終了し、後継機にあたるNeoシリーズを取り扱いしております
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